インプラントの詳しい構造
それはいったいなぜなのか、免疫システムに関係する遺伝子から原因や解決法を探ろうとする研究も活発になっている。
このようなことから、I総長が説明しているように、「ガン医療における遺伝子治療への期待は大きい」のである。
日本癌学会の開催に5か月ほど先立つ5月21日には、日本遺伝子治療学会が設立されて初めての総会が東京で開かれた。
初代の総会長に選出された国立国際医療センターの総長でもある高久史麿氏は、学会機関誌『ジーン・セラピー(遺伝子治療)』創刊号の刊行の辞として、次のような序文を寄せているが、遺伝子治療の歴史と将来の可能性、世界での日本のポジションが要領よく語られている。
「遺伝子治療が今後その発展が期待される新しい治療として、注目を浴びている事は周知の如くである。
しかし1989年に既にヒトのリンパ球に遺伝子を導入して本人に戻すマーキングの実験を行い、更にその後着々と遺伝子治療研究の対象となる症例を増やすと共に、遺伝子治療の対象となる疾患別も癌、AIDS、重篤な先天性疾患から慢性関節リウマチ、閉塞性末梢血管障害へとその範囲を広げている。
アメリカは言うに及ばず、オランダ、フランス、イタリーなどの欧州諸国に比べても、わが国の遺伝子治療研究の現状は明らかに遅れていると言わざるを得ない。
しかし、わが国に於いても漸く遺伝子治療のガイドラインが出来、審査体制も整い、最近遺伝子治療の具体的なプロトコールの審査が国の委員会において始まっている。
このような時期にわが国に於いて遺伝子治療学会が設立され、第1回の総会が開かれようとしている事は誠に時宜を得たものである。
本学会の設立を契機として、わが国の遺伝子治療の研究が新しい一歩を踏み出す事を期待したい。
この序文にある1989年の″マーキングの実験″とは、先にふれたA博士らにょるADA欠損症の少女たちへの治療の前段階にあたる。
外来の遺伝子が実際にベクターによってヒト細胞(リンパ球)に入る、という現象が確認できた歴史的な実験である。
これによって実際の治療実験へと進み、その成功がまた別の病気治療への道をひらいたと高久氏は述べているのである。
ちなみに「プロトコール」とは、治療の方針や手順をまとめたものをいう。
これを見ると、日本でも遺伝子治療を行うための体制づくりが進められていることがわかる。
その第1号が北大病院のT君の治療というわけだが、すでに多くの病気が遺伝子治療の対象となっていることも、高久氏の話から理解できるのである。
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